母はかつては何人もの美容師をかかえる美容院を切り盛りしていたが、年老いてからは自宅の狭い一角を美容室のスペースにして、昔からの客に来てもらったり、たまに出張に出て簡単なカットをしていた。

しかし、コロナ禍で1年以上も会えなかった間に母はすっかり年老いていた。
背中が曲がり、テレビのリモコンがうまく使えなくなり、同じことを何度も聞くようになっていた。

それでも気丈に美容師の仕事を続けていたが、次第に長時間立ち続けることが難しくなり、ついに一昨年、88歳で美容師をやめた。

母が日々年老いて行くことが、目に見えてわかる。
今できていることがいずれできなくなるその前に、私は母が美容師として生きた証を残そうと思った。